多様性を死語に−セクシュアリティから生きづらさを減らす

ー今日はよろしくお願いします。どういったサービスを運営されていますか?

中西高大:anone,というセクシュアリティの診断ができるサービスを運営しています。セクシュアリティって、最近よく聞く「LGBT」に該当する人のみに関係することだと思われがちですが、実は全ての人が持ってるんですよ。

このサービスでは質問に答えていくと、その人のこころの性、恋愛的指向、性的指向、表現したい性という4つのカテゴリでセクシュアリテが診断されます。


高大:面白いのは恋愛的指向、いわゆる「好きになる人」と、性的指向を抱く対象は必ずしも一致しないということです。恋愛的指向は男性と女性両方に恋をするバイロマンティックという名前のセクシュアリティでも、性的指向は異性に対して性的な欲求を抱くヘテロセクシャルだったりします。

中には知性を愛するサピオセクシャルや、強い信頼関係で恋に落ちるデミロマンティックといったセクシュアリティも存在します。

ー知性を愛する人に性的魅力を感じるセクシュアリティがあるなんてはじめて知りました…!セクシュアリティって思った以上に種類があるんですね。

高大:セクシュアリティの組み合わせはおおよそ2000ありますね。

ー2000もあるんですか!?

セクシュアリティは全員に当てはまり、複雑な構造をしています。

こころの性、恋愛的指向、性的指向、表現したい性というカテゴリーにわけ、セクシュアリティのグラデーションを表現しています。

中西高大

anone, 代表。タリキチプロジェクト2期生。学生NPO法人「アイセック・ジャパン」にて大阪大学支部の副代表・新規事業の立ち上げに従事。現在は、セクシュアリティを診断する「anone,」(@anone_me)の開発・運営を行なっている。

好きではないけど、なんだか嬉しい。


ーいつからセクシュアリティというものに関心があったんですか?


高大:高校生のときに、クラスメイトの男の子を気になりはじめたのがきっかけですね。好き…ではなくって、純粋にその子から話しかけてくれるのが嬉しかった。例えば、その子が教室に入ってきた時にバッと肩を組んでくれたり(笑) でも、一方でその子のことが気になる女の子がいると聞いたら、ちょっと嫉妬しちゃうみたいな(笑)


ーなんだかかわいいですね(笑)


高大:結局、他の女の子が気になりはじめてその子に対する気持ちはなくなったんだけど、大学入ってからも、あれはなんだったんだろうっていう疑問が残り続けました。


大学ではNPO法人アイセックジャパンやLGBTのサークルに入って、友達のセクシュアリティに関する悩みをきくなかで、高校のときの僕が男の子に抱いていた感情と似ているなって。


僕も含め多くの人が、同性を好きになることに引け目や後ろめたさを感じている。それに違和感を感じました。友人から冷たい目で見られたり、家族から否定され、自分を出せない状態がおかしいなと思いました。


そういった自分という存在が社会的にも、自分にも認識されていない、いわゆる多様性が達成されていない状態に課題意識を持つようになりました。

なんで偏見が起きるか考え続けた。


ータリプロはどんな意識で取り組みましたか?


高大:タリプロ中はずっとヒアリング調査をしていました。ヒアリングも結構きつくて…。同性を好きになる人に対してどういう印象を持っているかきいても「キモい、なんか嫌だ」って言われることが多かったです。タリプロ前はセクシュアリティに寛容な人たちが多い環境にいましたから、そういった不愉快に感じる人の気持ちがわからなかった。僕が描いていた理想もなんの脈略もなく「無理」って言われて、もう諦めかけてましたね。


ーそこからどう変わっていったんですか?


高大:どうしてこんなに多様性が認められないんだろうって悩んでいたら、メンターさんに「多様性、多様性っていっている君が一様性だ」と言われてはっとしましたね。


僕はそれまで同性に恋をする人に対してキモいという人の背景や気持ちを無視していました。この人は「キモいって言う人」みたいにレッテルを貼ってしまい、そこから深く考えずに向き合うことから逃げていました。


メンターさんの一言でもっとそういう人たちの背景を知るために、LGBTなどの知見がない人を中心にヒアリングをしていきまいしたね。


ーなるほど。ヒアリングをしていく中でセクシュアリティに寛容ではない人のボトルネックってなんだったんですか?


一つは過去に嫌な経験があって自分のセクシュアリティの話をするのが怖くなってしまっていること。


二つ目はセクシュアリティを伝えられた経験がないからこそ、LGBTをファンタジーの存在のように思ってしまい、身近にいないと認識してしまうことです。




ー逆にセクシュアリティに引け目を感じている人の問題点は?


自分のセクシュアリティに引け目を持っている人たちって、いつ自分のセクシュアリティをカミングアウトできるか伺っている。例えば、LGBTのドラマの感想を聞いてみて相手がちゃんと自分のことをわかってくれるかを探っていく。それってすごくリスキー。


オンライン上だと自分から話を切出さなくても、向こうからセクシュアリティに対する考え方を意思表示してもらえ、自分のことを話した方が精神的ストレスが少ないのかなと思い、今のサービスの形があります。

セクシャリティという課題を乗り越えた先の景色を見たい。


ー台湾では先日同性婚が合法化しましたが、日本ではセクシュアリティやジェンダーに関心は以前に比べ高まってはきたものの、まだまだ多様性を認め辛い社会なのかなと感じています。そこに高大さんが飛び込むには勇気がいったのかなと想像するのですが…。


高大:以前、あるイベントに参加した際にゲストの方が「僕は山を登っている感覚で事業をやっていて、今はだいたい7合目。10合目にきたときに死んでいいかなと。みんなはどんな山(課題)を登りたいですか?」と問いかけをしてくださった時に、僕はセクシュアリティで引き目を感じ、生きづらい人がいるという課題の山を登り切らないと、後悔するなと強く感じました。


その時がセクシュアリティという課題を解決ことと自分の生き方がリンクした瞬間でした。


ーその課題の山を乗り越えた先に、高大さんが見たい景色はどんなものですか?


高大:多様性を意識しなくても、その場が多様性に溢れている景色をみたいですね。


人にはセクシュアリティや国籍など、アイデンティティがある。今はそのアイデンティティを良くも悪くも誇張してしまう。例えば、あなたは同性が好きだからこういう風に対処しないといけないとか。


意識しなければ共生できないのではなく、みなのアイデンティティをフラットに話せる世界を作りたいなと思っています。


ー最後に、anone,をまだ使っていない人に一言お願いします。


セクシュアリティってその時の環境や人間関係によって日々変わるものなんです。だから、診断で思っていたのと違っても、「あ、こんな自分もいるのかもしれない」と気軽に楽しんでほしいなと思います。


誰かのセクシュアリティが理解できないっていうこともあるかもしれませんが、それでいいと思っています。全てを受け止められない自分がいるということをまず認めることからはじめて欲しいし、例えその人の5%わからなくても、残りの95%を好きになれるような世界が広がっていけばいいなと思います。


anone, 公式Twitter @anone_me

インタビュワー:辻野結衣